樟脳
(しょうのう)
生薬別名 | |
生薬ラテン名 | Camphora |
生薬英名 | Cassia Bark Oil |
科名 | クスノキ科 Lauraceae |
基原 | クスノキ Cinnamomum camphora J.Presl (IPNI:463336-1) |
薬用部位 | 油脂 |
選品 | |
主要成分 | モノテルペノイド monoterpenoids - Camphene (C. camphora 材, 葉) - Cineole (C. camphora 材, 葉) - Phellandrene (C. camphora 材, 葉) - d-Camphor (C. camphora 材, 葉) - α-Pinene (C. camphora 材, 葉) フェニルプロパノイド phenylpropanoids - Eugenol (C. camphora 材, 葉) - Safrole (C. camphora 材, 葉) |
薬理作用 | d-camphor は局所刺激作用と防腐作用があり,副作用は少ない.古い中枢興奮薬で,中枢神経系全般に興奮を起こさせ,延髄の呼吸中枢,血管運動中枢を興奮させて呼吸量増大,血管を収縮させて血圧を上昇さす.心臓に対しては直接にはかえって抑制作用を示すが,中枢性心臓興奮作用が認められるという報告もある.大量投与では精神興奮状態を呈し,運動中枢刺激により癲癇様痙攣を起こす.また解熱作用を呈することもある.生体内酸化物である trans-π-oxocamphor は,心拍動を旺盛にし,また延髄に作用して呼吸を促進し,血管を収縮させる.そのグルクロン酸抱合体はほとんど作用しない.alpha-camphor が強心作用を呈するためには生内における酸化が充分でなければならない. |
臨床応用 | 吸収が悪く胃を刺激するので,現在では内服することは殆どない.注射液の形で,呼吸中枢,血管中枢及び心臓の興奮に用いることがあり,外用薬として神経痛,打撲症,しもやけ,皮膚病に湿布,また嗽薬,浣腸,吸入薬にも配合される. |
頻用疾患 | 神経痛, 打撲, しもやけ, 皮膚掻痒症 |
含有方剤 | |
帰経 | 心, 脾, 肺 |
性 | 涼 |
味 | 辛, 苦 |
神農本草経 | |
中医分類 | 外用薬 |
薬能 | 開竅醒神,清熱止痛.熱病神昏、驚厥,中風痰厥,気郁暴厥,中悪昏迷,胸痺心痛,目赤,口瘡,咽喉腫痛,耳道流膿に用いる. |
薬徴 | |
備考 | クスノキ C. camphora Presl の材や枝を細片とし,水蒸気蒸留すると,カンフル油が留出する.この留出物の約40%が結晶カンフルで,冷却すると粗製樟脳(山製樟脳)が析出する.粗製樟脳を分離した60%の油分を樟脳油という.この樟脳油の原油中にはなお約50%のカンフルが溶解しているので,これを減圧分留してカンフルを分離する.この際沸点の順序に従って白油(white oil, bp200゜以下),赤油(brown oil, bp200~270゜),藍油(blue oil, bp270゜以上)に分けられる.こうして得たカンフルを再製樟脳という.粗製および再製樟脳を昇華精製して,第1次精製樟脳(改正樟脳)とし(これは主としてセルロイド製造に用いる),更にこれを昇華精製して,高純度の板状あるいは粉末状の精製樟脳とする.「冰片」とも称する.天然樟脳は d-camphor であり,合成樟脳は dl-camphor である.なお l-comphor はキク科(Compositae)の Blumea balsamifera DC., Artemisia tridentata Nutt. などに60~70%含まれている.d-comphor は C. camphora の変種であるクスノキダマシ C. camphora Presl var. nominale Hayata (烏樟,臭樟,花樟)やホウショウ C. camphora Presl var. nominale Hayata subvar.hosyo Hatusima = C. camphora Sieb.var. glaucescens Al. Br. (芳樟)にも含まれ,抽出原料とされる.ただしホウショウ(芳樟)の主成分は linalool である. 外部リンク: 民族薬物DB, KNApSAcK |
参考文献 | 主要成分 C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. II, pp. 226-228. |